年に一度受けるか受けないかの健康診断。自分の健康状態を知るせっかくの機会です。
検査の結果で引っかかった場合、検査票を見て異常があった事は解りますが、一体何がどういう具合に悪いのか解りにくいモノです。
健康診断の結果 腎臓で尿蛋白がプラスマイナス 尿潜血が2+ 原因って何?
簡易の健康診断であっても、ほぼ必ず行う尿検査。
検査票に書かれている内容にはどのような意味があるのでしょう。
尿蛋白について
尿に含まれる蛋白質の数値から腎臓が正常に機能しているのかを調べる事が出来ます。
腎臓が正常に機能してる場合は、腎臓にある糸球体という部分で血液をろ過しています。通常であると蛋白質は比較的大きな物質なので、ほとんどこの糸球体という部分ではろ過されません。
わずかにろ過された蛋白質も、尿細管という糸球体の次の器官で処理される為、尿に混じる蛋白質はごくわずかです。
糸球体の機能が低下していると尿細管での処理が追い付かなくなり、本来身体に吸収されるはずの蛋白質が漏れ出して尿に混じってしまいます。
検査結果の見方としては
- 基準値を表す(-)
- 要注意を表す(+)、(±)
- 異常値を表す(2+以上)
という具合になります。
検査結果が(2+以上)であった場合は糸球体の病気(慢性腎炎)などを疑う必要があります。
高熱を伴う風邪や、激しい運動の後、重度の高血圧などでも糸球体から漏れる蛋白質の量が多くなる事がある為です。
再検査の結果、一過性のモノである場合ももちろんあります。
いずれにせよ、尿蛋白の異常が出た場合は詳しく検査する事が必要です。
尿潜血について
尿潜血とは、尿に血液の一部である赤血球が混じる状態の事です。目に見えて解る様な血尿(肉眼的血尿)である事はほぼ無く、検査で発見される事が多くあります。
尿に赤血球の混じる原因としては尿路(尿の通り道)である、腎臓、尿管、膀胱、前立腺や尿道などに何らかの異常が起きている事が考えられます。
細菌感染などによる炎症(膀胱炎など)、尿路結石症、慢性腎炎、最悪の場合だと尿路のガンなどです。
検査結果の見方としては
- 基準値を表す(-)
- 要注意を表す(+)、(±)
- 異常値を表す(2+以上)
という具合になります。
この場合も高熱を伴う風邪や、激しい運動の後だと血液が尿に混じる事があります。
また特に女性の場合、生理中である為に血液が尿に混じってしまう事も多くあります。この場合血液に含まれる蛋白質も検出される為、尿蛋白にも異常値が出る事があります。
再検査を受けても原因がはっきりと解らない突発性血尿と呼ばれる症状の場合だと、特に治療の必要が無い事もありますが、尿路に出来るガン(特に膀胱ガン)は尿潜血から発見出来る事も多いので、異常が出た場合はしっかりと検査を受けましょう。
健康診断の結果 腎臓で尿沈渣 赤血球 5-9 原因って何?
尿沈渣とは尿に含まれる成分を詳しく分析する検査です。尿を5分程遠心分離器にかけると、成分が分離して沈殿します。この沈殿した成分を分析します。
この検査で検出される成分には
- 赤血球
- 白血球
- 上皮細胞
- 円柱細胞
- 結晶成分
があります。
通常、尿にこれらの成分が含まれる量はごく微量である為、尿蛋白や尿潜血の検査で異常値が出た場合にこの検査をします。
1視野といわれる、顕微鏡で400倍に拡大した範囲を複数の視野にわたって検査します。その中でこれらの成分がいくつ含まれているかで、どこにどのような異常があるかを判断します。
例えば赤血球5-9と検査結果に書かれていた場合は、1視野に赤血球が5個の部分もあり9個の部分もありますよという事です。
それぞれの成分ごとに詳しく説明します。
赤血球
基準値は1視野に3個以内です。
尿に赤血球が多く見られる場合、どこかで出血している可能性があります。
1視野に5~20個の赤血球が見られる事を微少血尿といい、定期的に(1~2カ月に1回)観察が必要です。
考えられる主な病気は急性糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、腎腫瘍、腎結石などです。
白血球
基準値は1視野に2個以内です。
尿に白血球が多く見られる場合は、どこかで出血か炎症を起こしている可能性があります。
白血球にも種類があり、ウィルス感染が原因の場合は好中球という白血球が多く見られます。
薬などのアレルギーで腎臓が病気になっている場合は好酸球という白血球が見られる事があります。
考えられる主な病気は腎盂腎炎、膀胱炎などです
上皮細胞
基準値は1視野に数個です。
上皮細胞は粘膜など作っている細胞で、尿路のどこかで炎症が起きていると剥がれ落ちて尿に混じります。
考えられる主な病気は膀胱炎、尿道炎などです。
円柱細胞
基準値は1視野に0個です。
円柱細胞とは、尿細管の中で作られる物質です。赤血球円柱、白血球円柱、硝子様円柱など、円柱内に存在している物質の種類によりそれぞれ名前がついています。
通常の場合、全ての視野を検査しても円柱細胞は数個あるか無いか程度の為、数視野で確認された場合は尿細管、あるいは糸球体に異常があると考えられます。
考えられる主な病気は慢性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群などです。
結晶成分
基準値は1視野に数個です。
結晶成分は通常、食事や生理的な塩類の代謝で出現します。尿に混じっている結晶の種類で病気かどうかを判断します。
ビリルビン結晶やチロジン結晶、ロイシン結晶といった種類の結晶が見られる場合には肝臓の病気の可能性があります。
考えられる主な病気は腎結石、急性肝炎、閉塞性黄疸、痛風などです。
赤血球や白血球の数値は体調により変わる事もあるので、正確な診断の為に異常値が出た場合には必ず再検査を受けましょう。
その他の異常値では、おもに腎臓内科や泌尿器科で尿中成分の定量検査、尿素窒素、クレアチニン、電解質などの血液検査、超音波検査、X線CT検査、腎盂(尿路)造影、腎生検などの詳しい検査を受ける必要があります。
最悪の場合にはどこかにガンが見つかったり、透析治療が必要になる事もあります。
費用は検査項目にもよりますが、精密検査をした場合でも5,000円~10,000円位と考えていれば大丈夫です。異常が見つかった場合は、とにかく正確に診断してもらう必要があります。
一過性の異常であればそれで安心する事も出来ますし、病気が見つかった場合も早期に治療を始める事が、その後の治療による心身への負担の軽減に繋がる事もあります。
健康診断の結果 腎臓で再検査にならないために
尿検査の異常があった場合に考えられる病気は多岐に渡ります。その為、何をしていれば大丈夫、何をしていたから病気になってしまったと言い切る事は出来ません。
腎臓の病気というと塩分の取り過ぎが原因だというイメージがありますが、腎臓の病気の中には塩分が不足している事が原因で起こる塩分喪失性腎炎という病気もあります。
民間療法を信じた為に、本来必要な治療の真逆の事をしてしまっている可能性もあります。
最初の段階の尿検査では誤陽性が出る事も多く見られます。
誤陽性による再検査にならない為に出来る事は、尿検査の前日に激しい運動をしない事や、指示に従いしっかりと採尿する位の方法しかありません。誤陽性が出るのは検査の方法がそこまで精密なモノでは無い事が原因ですが、この段階で異常が出たという事実をしっかりと受け止める必要があります。
再検査となると、仕事や勉学の都合などなかなかすぐに受けようという気にはなれない事もあります。
しかし、これから健康に生きていく時間の事を考えれば、再検査を受け異常があるのか、一過性のモノなのかしっかりと診断してもらう事には非常に大きな意味があるといえます。
まとめ
自ら進んで人間ドックを受けたりしない限り、健康診断を受ける機会は年に1度あるか無いかです。
せっかくの機会を活かし普段なかなか考える事が無い、これからも続いていくはずの人生の為にもしっかりと自分の健康状態を知る事はとても大事です。
もし検査の結果、異常が出た場合は自分の身体を蔑ろにせず、不調のサインに耳を傾けましょう。